耐震等級とは?1〜3までの等級の違いなどの基本的な違いから知ろう
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地震大国である日本において、家の耐震性能は非常に重要な要素です。
建物の耐震性能を示す指標の一つに「耐震等級」がありますが、皆さんはその違いをご存知でしょうか。
耐震等級には1から3までの等級があり、数字が大きいほど高い耐震性能を持っています。
等級1は建築基準法の最低基準を満たす程度ですが、等級2は1.25倍、等級3になると1.5倍の耐震性を有するのです。
この記事では、それぞれの耐震等級の特徴と、等級を上げるための方法について詳しく解説します。
1. 耐震等級とは?建築基準法との関係
耐震等級とは、建築物の耐震性能を評価するための指標の一つです。
日本では、建築基準法により建築物の最低限の耐震性能が定められていますが、耐震等級はその基準をさらに上回る性能を示すものです。
1-1. 建築基準法で定められている耐震基準とは
建築基準法は、建築物の最低限の安全性を確保するために、構造強度に関する技術的基準を定めています。
この基準は、 建築物の用途、規模、構造種別などに応じて、地震力に対する建築物の強度や靭性を規定 しています。
建築基準法の耐震基準は、過去の大地震の被害状況や研究成果を踏まえ、段階的に強化されてきました。
現行の耐震基準は、1981年に改正された新耐震基準であり、 中規模の地震に対しては構造体を無損傷に、大規模の地震に対しては倒壊を防止することを目的 としています。
1-2. 建築基準法の耐震基準を上回る「耐震等級」の存在
建築基準法の耐震基準は最低限の基準であるため、より高い耐震性能を求める場合には、それを上回る基準が必要となり、そこで登場するのが「耐震等級」です。
耐震等級は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく「住宅性能表示制度」の中で定められています。
この制度では、 耐震等級1から3までの3段階で耐震性能を評価 しており、数字が大きいほど高い耐震性能を有していることを示します。
1-3. 住宅性能表示制度における耐震等級の位置づけ
住宅性能表示制度は、住宅の性能を客観的に評価し、等級などで表示する制度です。
この制度では、耐震性能以外にも、省エネルギー対策、バリアフリー対策、耐久性など、住宅の様々な性能について等級が設定されています。
耐震等級は、この制度の中でも特に重要な位置づけにあります。耐震等級の評価方法は以下の通りです。
- 耐震等級1:建築基準法の耐震基準を満たしている
- 耐震等級2:建築基準法の1.25倍の耐震性能を有している
- 耐震等級3:建築基準法の1.5倍の耐震性能を有している
耐震等級2以上の住宅は、 大地震に対して倒壊や崩壊を防ぐだけでなく、大きな補修をすることなく使い続けられる ことを目指して設計されています。
住宅の長寿命化や、大地震後の速やかな復旧を考える上で、耐震等級は重要な指標となっています。
以上のように、耐震等級は建築基準法の耐震基準をベースとしつつ、それを上回る高い耐震性能を実現するための指標であり、住宅の品質や性能を評価する上で重要な役割を果たしています。
2. 耐震等級1〜3の違いを理解しよう
耐震等級は、建物の耐震性能を示す指標です。
等級が高いほど、地震に強い家であることを意味します。
耐震等級は、1から3まであり、それぞれ建築基準法の耐震基準に対する倍率で表されます。
耐震等級1は建築基準法の耐震基準と同等、耐震等級2は建築基準法の1.25倍、耐震等級3は建築基準法の1.5倍の耐震性能を持っています。
2-1. 耐震等級1は建築基準法の耐震基準と同等
耐震等級1は、建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たしている等級です。
つまり、建築基準法の耐震基準と同等の耐震性能を持っています。
建築基準法の耐震基準は、1981年に大幅に改正され、それ以前に建てられた家よりも耐震性が高くなっています。
しかし、阪神・淡路大震災以降、さらに耐震基準が見直され、現在の建築基準法の耐震基準が定められました。
2-2. 耐震等級2は建築基準法の1.25倍の耐震性能
耐震等級2は、 建築基準法の耐震基準の1.25倍の耐震性能を持っています。
これは、耐震等級1よりも25%耐震性能が高いことを意味します。
耐震等級2の家は、大地震が発生した場合でも、倒壊や崩壊の危険性が低く、安全性が高いと言えます。
また、耐震等級2の家は、耐震等級1の家よりも地震による損傷が少ないため、修繕費用も抑えられます。
2-3. 耐震等級3は建築基準法の1.5倍の耐震性能
耐震等級3は、最も高い耐震性能を持つ等級です。
建築基準法の耐震基準の1.5倍の耐震性能を持っており、耐震等級1よりも50%、耐震等級2よりも20%耐震性能が高くなっています。
耐震等級3の家は、阪神・淡路大震災クラスの大地震が発生しても、ほとんど損傷しないと言われています。
また、東日本大震災クラスの巨大地震が発生した場合でも、倒壊や崩壊の危険性は極めて低いと考えられます。
一般的に、耐震等級が高くなるほど、建築コストが高くなる傾向があります。
耐震等級2の家は、耐震等級1の家よりも5~10%、耐震等級3の家は、耐震等級1の家よりも10~20%建築コストが高くなると言われています。
しかし、多少コストが嵩んでも、地震大国である日本では、耐震性能が高い家を建てることが重要です。
特に、地震の多い地域や、住宅の耐用年数が長い場合は、耐震等級2以上の家を建てることを推奨します。
また、耐震等級は、住宅性能表示制度の項目の一つとして表示されます。
住宅を購入する際は、耐震等級を確認し、自分の予算と必要な耐震性能を考慮して、適切な耐震等級の家を選ぶことが大切です。
3. 耐震等級の違いが示す地震への耐久性
耐震等級は、建物の地震に対する強さを示す指標です。
等級が高いほど、大地震に耐えられる可能性が高くなります。
耐震等級は1から3までの3段階に分かれており、それぞれの等級で地震への耐久性が異なります。
3-1. 耐震等級と震度7クラスの大地震への耐久性の関係
耐震等級1は、建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たしているレベルです。
震度6強から7程度の大地震で倒壊・崩壊する危険性があります。
耐震等級2は、 震度7クラスの大地震で「倒壊・崩壊しない程度」の耐震性能を有しています。
ただし、大きな損傷を受ける可能性があります。
耐震等級3は、震度7クラスの大地震でも「ほとんど損傷しない」レベルの高い耐震性能を持っています。
建物の継続利用が可能な状態を保てる可能性が高いです。
3-2. 耐震等級の違いによる地震保険料の割引
耐震等級の高い建物は、地震による損害リスクが低いと評価されるため、地震保険料の割引が適用されます。
耐震等級に応じた地震保険料の割引率は以下の通りです。
耐震等級 | 割引率 |
---|---|
等級1 | 割引なし |
等級2 | 30% |
等級3 | 50% |
耐震等級2や3の建物は、地震保険料が大幅に割引されるため、長期的な防災投資としてもメリットがあります。
ただし、割引率は保険会社により異なる場合があるので、詳細は契約する保険会社に確認することが大切です。
耐震等級の違いは、地震への耐久性だけでなく、地震保険料にも影響を与えます。
住宅購入や建築の際には、耐震等級を確認し、自分に合ったレベルの耐震性能を選択することが賢明です。
4. 耐震等級を上げるための工夫と対策
耐震等級を上げることは、地震大国である日本において、家族の安全と財産を守ることに直結します。
建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たすだけでなく、より高い耐震性能を確保するための様々な工夫と対策があります。
ここでは、 構造計算による耐震設計の徹底、接合部の補強による耐震性能の向上、制振装置の設置で更なる耐震性アップ など、耐震等級を上げるための具体的な方法について詳しく解説します。
また、耐震等級を上げるために必要な追加コストについても触れていきます。
4-1. 構造計算による耐震設計の徹底
耐震等級を上げるための第一歩は、 構造計算による耐震設計を徹底することです。
構造計算とは、建物の骨組みに作用する力を計算し、それに耐えられる構造設計を行うことを指します。
建築基準法では、建物の規模や用途に応じて、構造計算の方法が定められています。
しかし、より高い耐震性能を確保するためには、法律で定められた以上の構造計算を行う必要があります。
限界耐力計算による耐震設計
限界耐力計算とは、建物の骨組みが崩壊する直前の状態を想定し、その時の建物の耐力を計算する方法です。
この計算方法を用いることで、 建物の終局的な耐震性能を確認することができます。
限界耐力計算による耐震設計を行うことで、建物の耐震性能を大幅に向上させることが可能です。
ただし、計算の手間とコストがかかるため、一般的な住宅では採用されないことが多いのが現状です。
時刻歴応答解析による耐震設計
時刻歴応答解析とは、過去の大地震の波形データを用いて、建物の地震時の挙動をシミュレーションする方法です。
この解析方法を用いることで、建物の動的な耐震性能を詳細に把握することができます。
時刻歴応答解析による耐震設計は、超高層ビルなどの大規模建築物で採用されることが多いですが、戸建て住宅でも採用することが可能です。
ただし、解析に必要な技術と設備が必要となるため、コストがかかります。
4-2. 接合部の補強による耐震性能の向上
建物の耐震性能を向上させるためには、柱や梁などの構造部材だけでなく、 それらの接合部の強度も重要です。
接合部が弱いと、地震の際に建物が崩壊する危険性が高くなります。
接合部の補強には、様々な方法があります。代表的なものとして、以下のような方法が挙げられます。
- 筋交い(ブレース)の設置
- 構造用合板による壁の補強
- 金物による接合部の補強
- 高強度コンクリートの使用
これらの補強方法を適切に組み合わせることで、建物全体の耐震性能を大幅に向上させることができます。
ただし、補強工事にはコストがかかるため、予算との兼ね合いを考える必要があります。
4-3. 制振装置の設置で更なる耐震性アップ
制振装置とは、 地震の揺れを吸収し、建物の揺れを抑制するための装置です。
制振装置を設置することで、建物の耐震性能を更に向上させることができます。
制振装置には、様々な種類がありますが、代表的なものとして以下のようなものがあります。
- オイルダンパー
- 粘性ダンパー
- 摩擦ダンパー
- バネ・ダンパー
制振装置は、建物の規模や用途、予算に応じて選択する必要があります。
制振装置の設置には、かなりのコストがかかりますが、 建物の耐震性能を飛躍的に向上させることができるため、長期的な視点で見ると十分に投資に値する対策だと言えます。
4-4. 耐震等級を上げるために必要な追加コスト
耐震等級を上げるためには、通常の建築費用に加えて、追加のコストが必要となります。
追加コストの内訳は、以下のようなものが考えられます。
- 構造計算費用
- 構造部材の追加費用
- 接合部の補強費用
- 制振装置の設置費用
これらの追加コストは、建物の規模や目指す耐震等級によって異なりますが、通常の建築費用の10〜30%程度になることが多いようです。
ただし、将来の大地震に備えることを考えると、 安全性を確保するための投資は決して無駄ではありません。
耐震等級を上げるためには、設計段階から建築士と十分に相談し、予算や目標とする耐震性能を明確にしておくことが重要です。
また、補助金や税制優遇などの支援制度を活用することで、追加コストの負担を軽減することも可能です。
まとめ
この記事では、耐震等級の基本的な違いから、実際に等級を上げるための対策まで詳しく解説しました。
耐震等級は建物の地震に対する強さを示す重要な指標であり、等級が高いほど大地震でも倒壊しにくく損傷も軽微です。
耐震等級を上げるには追加のコストがかかりますが、家族の安全を守る長期的な投資と捉えることが大切です。

ホームマップ編集部
一級建築士や宅地建物取引士、インテリア・福祉住環境コーディネーター、住宅営業、およびファイナンシャルプランナーが在籍しております。私たちは、住宅や生活空間に関する深い知識と実務経験を生かし、読者の皆様にとって有益で実践的な情報を提供することを目指しています。家づくりに必要な知識から、インテリアの最新トレンド、資金計画まで、各分野の専門家が連携を取りながら、質の高い内容をお届けします。私たちの記事が、より良い家づくりを実現するお手伝いとなれば幸いです。